アクセル・ローズ率いるガンズ・アンド・ローゼズのまさに全盛期といえる1991年、当時はとんでもない世界的モンスターバンドとして人気絶頂、もう音楽だけではなく言動やファッションスタイルまで、みんな憧れてマネしていました。

Guns N' Roses『Use Your Illusion I』――30曲にも及ぶ巨大作、そして「November Rain」の破壊力
『Appetite for Destruction』で一気にスターダムへ駆け上がり、その勢いをそのままに『Use Your Illusion』という巨大な作品を発表。
しかも単なるハードロック・アルバムではなく、バラード、ブルース、カントリー、クラシック、パンク、実験的な楽曲まで取り込んでいます。
その「何でもあり」なスケール感こそが、この時期のガンズの魅力だったと思います。
よくよく考えると勤勉な日本人とは対極にあるバンドだと思いますけどね。
『Use Your Illusion I』が16曲入り。
さらに『Use Your Illusion II』が14曲入り。
合わせて30曲。
時間にして4時間近くにも及ぶ、とんでもないボリュームです。
ほとんど「2枚組アルバム」と言っていい内容なのに、それをあえてⅠとⅡという2枚のアルバムに分けて同時発売したわけです。
この2枚が発売された1991年すでにCDは一般的になっていました。
現在なら、これだけの曲数なら普通に2枚組として発売しても、それほど違和感はありません。
ところが当時は、2枚組にするとどうしても価格が高くなる。
そこでガンズ・アンド・ローゼズ側は、「2枚組にすると高価になってキッズが買えない」というような考えから、ⅠとⅡを別々のアルバムとして発売したと言われています。
これは、今振り返るとなかなか面白い判断です。
なにしろ結果的には、ファンは2枚とも買うことになるわけですから(笑)。
ただ、当時の自分自身を振り返ってみても、この判断には確かに納得できる部分があります。
私も発売当時、国内盤を2枚同時に購入するのはちょっとためらった記憶があります。
当時は今のようにサブスクで何十枚、何百枚のアルバムを気軽に聴ける時代ではありません。
CD一枚一枚が今よりずっと大きな買い物。
それをいきなり2枚。
しかもガンズ・アンド・ローゼズですから、決して安い買い物ではありません。
結局、発売当時は新宿で安く売っていた輸入盤を2枚購入しました。
その後、こちらは中古で購入した国内盤になります。
今になって考えると、あのとき2枚買っておいて良かったと思います。
ⅠとⅡ、どちらが人気だった?
この2枚、発売当時から「ⅠとⅡ、どっちが好き?」という話になりやすい作品でした。
個人的には、後々聴き直してみても、日本人的にはⅠのほうがバランスが良くて聴きやすいと思っています。
ただし、本国アメリカで売り上げが多かったのは、青いデザインの**『Use Your Illusion II』**のほうでした。
Ⅰからは Live and Let Die、Don't Cry、November Rain の3曲がシングルカット
ガンズを代表する超有名曲が3曲も入っています。
それなのに、なぜⅡのほうが強かったのか。
やはり大きかったのは、Ⅱに収録された2曲ではないでしょうか。
一つはボブ・ディランのカバー「Knockin' on Heaven's Door」
そしてもう一つが、「You Could Be Mine」
特に「You Could Be Mine」は、アルバム発売の時点ですでに映画『ターミネーター2』の主題歌として強烈な印象を残していました。
つまり『Use Your Illusion II』は、アルバムそのものが発売される前から「You Could Be Mine」が強烈に世間へ浸透していた。
さらに「Knockin' on Heaven's Door」も、ガンズ版として非常に有名になっていました。
そう考えると、Ⅱのセールスが強かったのも納得できます。
もちろんⅠの収録曲も負けていません。
むしろ、個人的にはⅠのほうがアルバムとしての起伏が自然で、最初から最後まで聴きやすい。
ハードな曲、バラード、カバー、大作とバランスよく並んでいるので、1枚のアルバムとして楽しむならⅠのほうが好きです。
「Live and Let Die」がお気に入りだった
Ⅰからはシングルカットされた3曲
「Live and Let Die」
「Don't Cry」
「November Rain」
中でも当時のお気に入りだったのが「Live and Let Die」。
これはウイングス(Wings)のカバーで、日本では映画『007/死ぬのは奴らだ』の主題歌としても知られている曲です。
ガンズ・アンド・ローゼズが演奏すると、オリジナルとはまったく違う凶暴なロック・ナンバーになります。
静かなところから始まって、徐々に盛り上がり、最後には爆発する。
オーケストラ・パートまで含めて、まさにガンズ仕様。
ポール・マッカートニーの曲をここまでハードに料理してしまうところも、このバンドの魅力でした。
当時はこの曲がテレビやラジオなどから流れてくるだけでもテンションが上がったものです。
Guns N' Roses - November Rain (Official Music Video)
『Use Your Illusion I』を語るうえで絶対に外せないのが、
「November Rain」。
この曲は、単なるアルバム収録曲というより、1990年代初頭のガンズ・アンド・ローゼズを象徴する一曲になりました。
壮大なピアノ。
美しいメロディ。
ストリングス。
そしてSlashのギターソロ。
ハードロック・バンドの曲とは思えないほどドラマティックなのに、最後には強烈なギターがすべてを持っていく。
そして、その楽曲の世界観をさらに巨大化させたのがミュージックビデオです。
とにかく金がかかっているMV
このミュージックビデオ、今見ても凄い。
とにかく景気がいい(笑)。
1990年代初頭のミュージックビデオとしては、まるでハリウッド映画のようなスケール。
結婚式、教会、パーティー、広大な屋外、そしてSlashのギターソロ。
「これ、ミュージックビデオですよね?」
と言いたくなるほどの大作です。
楽曲そのものが長いので、映像もそれに合わせて一つの短編映画のように作られています。
ストーリーはかなり悲しい。
幸せな結婚式から始まり、徐々に不穏な空気が漂い、そして後半に入ると状況が一気に変わっていく。
最後には突然、雨というか嵐がやってきて、すべてをめちゃくちゃにしてしまう。
曲のドラマティックな展開と映像が完全にシンクロしていて、当時としては相当インパクトのある作品だったと思います。
しかし、今見ると……
ただ、今になって見ると、ちょっと恥ずかしい(笑)。
アクセル・ローズはMVの中で結婚式を挙げています。
そして新婦役を演じているのが、当時アクセルと交際していたステファニー・シーモア。
さらに他のメンバーも、それぞれのパートナーを出演させています。
今考えると、
「そこまでリアルを持ち込むのか!」
という感じもします。
当時はロックスターの私生活そのものが「ロックの物語」になっていた時代。
アクセルの恋愛、メンバーのパートナー、豪華な結婚式……。
それら全部を映像に詰め込んでしまう。
今の感覚で見ると、ちょっと照れくさくなる部分もありますが、逆に言えば、それだけ当時のガンズ・アンド・ローゼズが「ロックスター」そのものだったということなのでしょう。
Slashの2回のギターソロが最高
そして、この曲で忘れてはいけないのがSlash。
「November Rain」には印象的なギターソロが2回登場します。
どちらも最高です。
特にSlashのレスポールから出てくる、あの甘くて太いギター・トーン。
速弾きで圧倒するというより、一音一音を泣かせるように弾く。
これぞSlashというギターソロです。
切ないメロディをギターで歌わせる。
チョーキング一発で感情を伝える。
「November Rain」が単なる大作バラードで終わらず、ハードロック・ファンにも強烈な印象を残したのは、やはりこのSlashのギターが大きかったと思います。
ただし、どうしても気になるところが……
そんな感動的なMVなのですが、個人的にどうしても気になってしまうところがあります。
教会を後にしたSlashが外に出て、そこでギターを弾き始めるシーン。
あの教会……
めちゃくちゃ小さくないですか?(笑)
あれだけ大勢の人が参加していた結婚式なのに、外観を見ると、
「えっ、この中に本当にあれだけの人数が入っていたの?」
というサイズ感。
まさかセットをケチったのか?
……などと余計なことを考えてしまいます(笑)。
もちろん実際には撮影上の都合や編集によるものなのでしょうが、あれだけ壮大な映像なのに、妙に現実的な部分が見えてしまうのが面白い。
これだけ制作費をかけた超大作なのに、教会だけ妙に小さい。
そこも含めて「November Rain」のMVの好きなところです。
「Bad Obsession」にはMichael Monroeが参加
『Use Your Illusion I』には、個人的にもう一つ気になるゲスト参加があります。
それが「Bad Obsession」。

ここでは、元ハノイ・ロックスのMichael Monroeがブルースハープでゲスト参加しています。
これはガンズの音楽的ルーツを考えるうえでも非常に興味深いところ。
ハノイ・ロックスは、ガンズ・アンド・ローゼズにとって重要な存在でした。
特にSlashやDuffだけでなく、アクセルも含めて、ハノイ・ロックスから受けた影響は非常に大きい。
そんなMichael Monroeが実際にガンズのアルバムへ参加しているわけですから、単なるゲスト以上に「夢の共演」という感じがあります。
こういうところを聴き直していくと、『Use Your Illusion』は単に売れたアルバムというだけではなく、ガンズがそれまでのロックの歴史を自分たちの音楽へ取り込んでいった作品だったことが分かります。
この後、ガンズは大きく変わっていく
そして『Use Your Illusion I』『II』の発売後、ガンズ・アンド・ローゼズは大きな転換期へ入っていきます。
メンバーの離脱や交代が相次ぎ、バンドの姿も徐々に変化していきました。
『Use Your Illusion』期のラインナップは、ガンズ・アンド・ローゼズの歴史の中でも特に豪華なメンバーが揃っていた時期。
しかし、この黄金期は長くは続きませんでした。
その後、カバー・アルバム『The Spaghetti Incident?』やライブ作品などは発表されたものの、オリジナル・アルバムの新作はなかなか登場しません。
そして最終的に次のオリジナル・アルバムが発売されたのは、
2008年。
『Use Your Illusion』から実に17年後です。
それが、アクセル・ローズを中心に長い年月をかけて制作された、
『Chinese Democracy』
でした。
1991年に『Use Your Illusion I』『II』を聴いていたファンからすれば、
「次のアルバムはいつ出るんだ?」
という状態が、まさか17年も続くとは思わなかったでしょう。
『Use Your Illusion』という作品は、そういう意味でもガンズ・アンド・ローゼズの一つの頂点だったと思います。
メンバーが揃い、巨大な予算を使い、巨大なツアーを行い、世界中でヒット曲を連発する。
そして「November Rain」のような、ハードロック・バンドの枠を超えた大作まで作ってしまう。
まさに「全盛期のガンズ・アンド・ローゼズ」
30年以上経った今聴いても、そのスケールの大きさには圧倒されます。
個人的には、ⅠとⅡを合わせた30曲というボリュームには少々お腹いっぱいになるところもありますが(笑)、それでも1枚ずつ取り出して聴くと、やはりⅠのほうが好き。
「Live and Let Die」で一気に盛り上がり、「Don't Cry」で聴かせ、「November Rain」で大きなクライマックスを迎える。
そこへ「Bad Obsession」のようなルーツを感じさせる曲も入っている。
ハードロック、バラード、カバー、大作、そしてロックスターとしての華やかさ。
その全部を詰め込んだのが『Use Your Illusion I』。
そして、その巨大な作品を最後に、ガンズ・アンド・ローゼズは長い迷走とも言える時代へ入っていくことになります。
だからこそ、このアルバムを聴くと、
「この頃のガンズは、本当に凄かったな」
と改めて思ってしまうのです。
Use Your Illusion I 曲目リスト
- Right Next Door To Hell
- Dust N' Bones
- Live And Let Die
- Don't Cry (Original)
- Perfect Crime
- You Ain't The First
- Bad Obsession
- Back Off Bitch
- Double Talkin' Jive
- November Rain
- The Garden
- Garden Of Eden
- Don't Damn Me
- Bad Apples
- Dead Horse
- Coma
posted with カエレバ
2022年には30周年最新リマスターとして2枚組のDeluxe Editionが発売されました。
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