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2010年『アティチュード・アジャストメント・デモズ』Attitude Adjustment Demos / Jerusalem Slim (エルサレム・スリム)

マイケル・モンロー(Michael Monroe)と、スティーヴ・スティーヴンス(Steve Stevens)が組んだ幻のバンド、Jerusalem Slim(エルサレム・スリム)。

1991年に録音されたデモ音源を収録したコレクターズ・アイテム『Attitude Adjustment Demos』です。

アルバム『Jerusalem Slim』の制作前に録音された楽曲も含まれており、完成したアルバムにボーナス・トラックとして収録されていた2曲に加え、さらに貴重な未発表曲5曲を聴くことができます。

METAL SWORD RECORDS USA MSCD-867

マイケルとスティーヴがどのような楽曲を作り、それがどのように完成版へと発展していったのかを知ることができる、非常に興味深いデモ集です。

エルサレム・スリム自体が短期間で消滅してしまったプロジェクトだっただけに、こうした音源が残されていること自体が貴重です。

このアルバムの魅力は、もちろん貴重な未発表音源を聴けることだけではありません。

デモ音源ならではのラフさも含めて、この時期のエルサレム・スリムがどのようなアイデアを持っていたのかを感じることができます。

完成版とデモを聴き比べても、デモの段階でほぼ完成形のアレンジになっており、よりバンドとして生々しく聴こえてきます、

これは発売されたアルバム『Jerusalem Slim』と違い、ベースのサミ・ヤッファ(Sami Yaffa)とドラマーのグレッグ・スミス(Gregg Smith)のリズム隊がしっかりバンドの土台を支えるグルーヴを出せてるからかも知れません。

※アルバム『Jerusalem Slim』では、ほとんどの曲のベースをスティーヴが弾き直したテイクがミックス時に使用されている。



マイケルと、スティーヴ、この二人に、マイケルのハノイ・ロックス時代の旧友であるベーシスト、サミとドラマーのグレッグを加えた4人で結成されたバンド、エルサレム・スリムは短い活動期間の中で正式なアルバムを発表することなく、最終的には空中分解してしまいます。

とはいえ、マイケル・モンローとスティーヴ・スティーヴンスという二人の個性的なミュージシャンが組んだプロジェクトだけに、両者のキャリアを振り返るうえでも非常に興味深い存在です。

マイケル・モンローといえば、もちろんハノイ・ロックスのフロントマン。

一方のスティーヴ・スティーヴンスは、ビリー・アイドル(Billy Idol)のギタリストとして「Rebel Yell」「Eyes Without a Face」などの作品に参加し、独特のギター・サウンドを確立していた人物です。

そんな二人が組んだのが、Jerusalem Slim。

しかし、せっかく結成されたこのバンドは、デビュー作を発表する前に活動を終えてしまいます。

その後、完成していたアルバム『Jerusalem Slim』は、バンド消滅という不本意な状況の中で、日本とドイツでのみ発売されることになりました。

allenkk.hateblo.jp


二人の繋がりはマイケル・モンローのソロ・アルバム『Not Fakin' It』にも関わっていたエンジニアのマイケル・フロンデリ(Michael Frondelli)がビリー・アイドルの『Rebel Yell』でもエンジニアリングを担当していたことからと言われています。

そして、このプロジェクトでプロデューサーを務めたのが、ドイツのヘヴィ・メタル・シーンで数多くの作品を手掛けてきたマイケル・ワグナー(Michael Wagener)。

Accept、Metallica、Ozzy Osbourneなど、数多くのハードロック/ヘヴィ・メタル作品で知られるプロデューサーです。

正式リリースされた『Jerusalem Slim』も最終的にはマイケル・ワグナーによってミックスされ、作品として仕上げられています。

「Delirious」からHanoi Rocksへ

未発表曲の中でも特に興味深いのが、1曲目の「Delirious」

この曲は、ヘヴィ・メタル・キッズ(Heavy Metal Kids) の楽曲のカバーですが、のちにハノイ・ロックスのアルバム『Twelve Shots On The Rocks』(2002)でも、再びカバーしている曲。

これは以前からマイケルや、ハノイ・ロックスの作品を追いかけてきた自分には、嬉しいデモテイクでした。

スティーヴ・スティーヴンスもアンディ・マッコイも大好きなギタリストですから。


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ちなみにマイケルは以前ソロアルバムでもヘヴィ・メタル・キッズの楽曲「She's No Angel」を2度カバーしています。

「Downwardly Mobile」からVince Neilへ

もう一つ興味深いのが、3曲目の「Downwardly Mobile」です。

この曲は、その後Vince Neil(ヴィンス・ニール)のソロ・アルバム『Exposed』へとつながっていきます。

スティーヴのエルサレムスリムの空中分解のニュースと、ヴィンス・ニールのバンドへの参加のニュースが、ほぼ同時に流れてきた時のショックは忘れられません。(当時のイメージではマイケルを裏切ってのヴィンス・ニールのバンドへの参加)

スティーヴはヴィンスのソロアルバム『Exposed』(1993) に参加

このアルバムで大々的にフィーチャーされたスティーヴのギターは、当時かなり衝撃的でした。

正直に言うと、『Jerusalem Slim』のとき以上に自由奔放に弾きまくっているように感じます。

allenkk.hateblo.jp

『Jerusalem Slim』の時期に作られた「Downwardly Mobile」は、後にタイトルやメロディーなどが変更され、ヴィンス・ニールの『Exposed』では「Can't Have Your Cake」として生まれ変わることになります。


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紆余曲折あったマイケルとヴィンスという二人が、歌詞は違えど同じ歌を歌っていること自体に、何ともいえない感慨があります。


さらに、ここには収録されていませんが、アルバム『Jerusalem Slim』のドイツ盤ボーナス・トラック「Scum Lives On」も興味深い曲です。

この曲は、エルサレム・スリム消滅後の1994年にマイケルとサミ・ヤッファが新たに結成したバンド、Demolition 23.の楽曲としてアルバムに収録されます。

こうして楽曲単位で追っていくと、エルサレム・スリムは短命に終わったものの、そこで生まれたアイデアや楽曲のいくつかが、その後の別のプロジェクトへ受け継がれていったことが分かります。

マイケル・ワグナーが完成させたアルバム『Jerusalem Slim』にデモヴァージョンで収録されていた「Teenage Nervous Breakdown」ですが、冒頭の部分で効果音からフェードインしてきて違和感ありましたが、今回の『Attitude Adjustment Demos』では、5曲目の「Lethal Underground」のエンディングがSEに繋がり、そこから「Teenage Nervous Breakdown」のイントロが被ってくという流れで、長年の違和感の答えが分かりました。

「人生で最悪の時」だったJerusalem Slim

マイケル・モンロー自身は、後年Jerusalem Slimについて、「人生で最悪の時」だったという趣旨の発言をしてる記事を見かけました。

現在のマイケルの活動やハノイ・ロックスの歴史を知っていると、この言葉はかなり重く感じられます。

amass.jp


なぜ、この二人の組み合わせが長く続かなかったのか。

そこについては、さまざまな要因があったと思いますが、マイケルはもともと、自分自身の音楽性を中心としたプロジェクトとして考えていた。
一方、スティーヴはスティーヴで、自分のギター・スタイルを自由に発揮するミュージシャン。

そこに、ヘヴィ・メタルの作品を数多く手掛けてきたマイケル・ワグナーがプロデューサーとして加わったことで、目指していた音楽の方向性に少しずつズレが生じていったのではないか――。

そう考えると、エルサレム・スリムが短期間で終わってしまったことも少し理解できるような気がします。

しかも、完成した音源のミックスまでマイケル・ワグナーが担当しているため、マイケル自身が望んでいた形とは異なる仕上がりになってしまいました。

もちろん、実際にどこまでが制作上の意見の相違だったのかについては、片方だけの言い分を聞いても分からない部分もあります。

だからこそ、完成した『Jerusalem Slim』と、この『Attitude Adjustment Demos』を聴き比べると、よりいろいろなことを想像してしまいます。


それでも個人的には、マイケル・モンローとスティーヴ・スティーヴンスという組み合わせは、今聴いても最高です。

今回紹介してる『Attitude Adjustment Demos』に収録されている未発表曲の1曲「Lights Out」にメンバーそれぞれの映像を掛け合わせた、ファン制作の擬似ミュージックビデオがYouTubeにありました。

映像で見るとやはりバンドが世に出なかったのが残念でありません。


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それぞれまったく違うバックグラウンドを持つ二人が一緒に音を出したからこそ生まれた独特の化学反応。

完成したアルバムが正式な形で大きく展開されることなく、バンド自体が消滅してしまったのは、本当に残念な結果ですが、その短い活動期間の中で生まれたアプローチのいくつかは、その後のVince Neil、Demolition 23.そして再結成したHanoi Rocksの楽曲として受け継がれていきました。

そんなエルサレム・スリムという短命なプロジェクトの「その瞬間」を記録した、非常に興味深いデモ音源集だと思います。

Attitude Adjustment Demos / Jerusalem Slim (1991)収録曲
  1. Delirious
  2. Deadman
  3. Downwardly Mobile
  4. Lights Out
  5. Lethal Underground
  6. Teenage Nervous Breakdown Alternate Version
  7. Final Word
  8. Rock 'N Roll Degeneration Alternate Version
  9. Hundred Proof Love
  10. Attitude Adjustment
  11. Gotta Get A Hold
  12. World Is Watching

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